美しい月に出逢う旅

~私という自然を生きる~

幸せな幸せな時間

先週の土曜日。

幸せな幸せな時間が持てた。宝物のような夢の時間だ。

 

その日は突然、13:30に弟から電話があった。

理由は大病院からのメッセージを私に共有するためだ。母の血圧はお薬の助けもあり100位はあるのだけれど、脈がかなり弱いため会いたい方は今のうちにどうぞと病院から進言があったとのこと。

 

たまたま用事があって、実家の隣町まで出向いていたので、急遽大病院に向かう事にした。面会時間は16時を指定。息子と一緒に遅いランチを予定していたので、腹ごしらえをしてから準備を整えた。どんな時間にしようか、前回の反省点も踏まえて色々考える時間も欲しいと思った。今度も5分と聞いていたし、防護用品3点セットも身につけなければならないだろう。限られた時間内で、どう過ごしたら後悔しないだろうか‥

 

そうしたら。

結論から言えば、何と40分間も母と一緒にいる事ができた!

幸せな幸せな時間が過ごせたのだ。

 

16:00。私が母の個室に入室した直後、母は寝ていて頭が追い付かず、なかなか私を認識できない様子だった。以前より急激に痩せてしまい、母の面影が薄くなってしまっている。看護師さんからの報告では、ここ2、3日は食欲がないため栄養ゼリーを出しているが、あまり口にしないと言う。

私がマスクを外して「lalaだよ」と話しかけると、ようやく私が誰なのか理解でき「お腹が空いた」と呟いた。慌ててナースステーションに出向き、許可を得た上で大急ぎで売店に向かった。

 

サンドイッチ、おにぎり、ジュース、プリンを購入。

急いで病室に戻り、看護師さん立ち合いの元で食事の介助をした。

 

母が選んだのは「サンドイッチ」だった。

確か、前回も電話口で「たまにはパンが食べたい」と言っていた。朝食に出してもらっているはずなのだがそこは病院食。おそらく味気ないのだろう。

土曜の16:00ということもあり売店は品薄だった。選択肢の少ない中で選んだ「卵とハムのサンドイッチ」を2cm程度に小さくちぎりながら、ひと口、またひと口とゆっくり咀嚼する母。時折り、りんごジュースを飲んでもらう。母はりんごが好きなのだ。

 

最初は僅か数口だろうと思っていたが、なんと1切れを完食!

 

同席してくださった若い看護師さんが何度も驚いていらした。凄い、凄いと励ましてくださる。途中で様子を見にいらした少し年上の看護師さんも、母の食事の光景に大きく目を見開き、とてつもなく驚いていらした。

私は娘としてとても誇らしく、とても嬉しかった。それと同時に、このくらいの量も食べられないはずと判断されている現況に対し、チクリとした物悲しさも感じていた。(しかし、それはどうしようもないことだと振り切った)

 

母と共に過ごした、この食事の時間。

母がゆっくり咀嚼してごくんと喉を通過する音。

どれをとっても、この上なく貴重でこの上なく生産的でありがたかった。幸せな幸せな時間だった。

 

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少し時間を巻き戻すことになるが、今回の面会では何故か防護服3点セットを付けるような指示はなかった。そのおかげで、いつもの私らしい雰囲気を損ねずに母との時間が持て、マスクも少し外すことができたのだ。

入室直後、母はぼんやりしていて会話になりそうになかったので、ロクシタンのハンドクリーム「桜」を母の手に塗りマッサージをしてみた。母の温もりを感じることができて嬉しかった。そうしていたら、突然、「あなたの手はあったかいね」と母が話だしたことで私達の会話が始まったのだ。

 

私の手も温かいかもしれないけれど、外ももう温かい。もう春だよと母に告げた。

そう、先週の土曜日は驚くほど温かく、もう春が来たと思うような陽気だったのだ。そんな会話をしているうちに、母からお腹が空いたというお声がかかったのだ。

 

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母の食事が終わり、約40分が過ぎようとしていた頃。

後からいらした二人目の看護師さんに「もうそろそろ‥」と促されて、母と私の時間が残りわずかとなった。私は母の額に私の額をつけて、涙声になりながら母に話しかけた。

 

お母さん、大好き。

お母さん、ありがとう。本当に色々ありがとう。

 

耳の遠い母に、私の声はきちんと伝わっただろうか?

 

母からの返事を待ったが、しばらく無言だった。

そして次の瞬間、母からきた返事は意表を突くもので、少しコミカルな内容だった。私の涙が引っ込んだだけでなく、息子に報告した際も二人で笑ってしまうようなものだった。私がいつまでも、ぐずぐず泣かないようにと母がもし意図したものであったなら。お母さん、私は本当に一生お母さんには適わないと思う。

笑わせてくれてありがとう。

 

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息子は母には会わないという選択をしたので、私からの報告が全てになる。

病院での報告はもちろん、それ以外の昔話など母との思い出話をたくさんした。楽しい思い出はいつまでもいつまでも色褪せない。

私達が母を愛しているかぎり‥